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静的診断の高スコアは「買える」を保証しない。同じ店を静的チェッカーと実歩行で測って並べた
同じ店を2つの道具で測ったら、片方は「UCP対応あり」と言い、もう片方は「会員登録のロボット確認で停止・20/100」と言いました。どちらも正しい。測っているものが違うだけです。
【2026-09-02 注記】この記事が根拠にしている公開デモ(hydrogen.shop)の停止について、内部監査を受けて再検証しました。当社の検知記録は実在します(recaptcha / hcaptcha / g-recaptcha の3パターンに反応)。一方でこの走行は画面の証拠を保存しておらず、今日の hydrogen.shop では同じ検知が再現しません。つまり第三者が検算できない結果です。数字はそのまま残しますが、参考値として読んでください。検証できる形で計測できていなかったことは、当社の落ち度です。
URL入力だけの「AI対応診断」が増えてきた
2026年に入って、ECサイトのAI対応を無料で判定するツールが立て続けに出ています。代表的なものを2つ挙げます。
- CloudflareのIs Your Site Agent-Ready?。llms.txt・MCP・Agent Skillsなど、エージェント向け標準への対応状況をスキャンして段階で判定します
- ハックルベリーのAIコマース診断ツール(2026年7月13日提供開始)。ECサイトのURLを入力すると、AIコマースに対応した設定ファイルの有無・機能定義・通信設定などをスコア化します(出典: PR TIMES 2026年7月13日)
どちらもURLを入れるだけで結果が出る手軽さで、自社サイトの現在地を知る入口としてよくできています。私たちもこの種のツールが広まること自体は歓迎です。無料で1分なら、やらない理由がない。
ただ、この種のツールのスコアを「エージェントから買える証明」として読むと、話がずれます。それを言葉ではなく一次データで示したいのが、この記事です。
同じ店を、2つの方法で測った
先にお断りしておくと、私たちは他社のストアを同意なく診断しません。これは製品の設計に組み込んだ約束です。なので今回の題材は、Shopifyが自社で公開しているデモストア hydrogen.shop だけです。実歩行の側は、私たちが2026年7月30日に同意記録つきで実走し、公開しているデモレポートをそのまま使います。
実歩行の結果: 20/100、会員登録のCAPTCHAで停止
- スコア 20/100(13アクション・推定コスト$0.54)
- トップページ到達は成功。次の「会員登録フォーム到達・全項目の自動入力」で、ロボット確認(CAPTCHA)を検知して停止
- ログイン・商品検索・カート投入・決済直前は未到達
- ボット対策に当たるまでの歩行(Walk)だけを見ると100/100。つまりUIは歩けたが、ポリシーの壁で止まった
補足すると、私たちはCAPTCHAを突破しません。この停止は「失敗」ではなく、サイト側のボット対策が働いたという「ポリシー結果」として記録しています。人向けの確認を残すこと自体は正当です。
静的チェックの結果: レベル1、でもUCPは「対応あり」
次に同じ hydrogen.shop を、Cloudflareのチェッカーで測りました(2026年8月20日実測)。結果は「Level 1: Basic Web Presence」。robots.txtとサイトマップは合格、MCPやA2Aなどエージェント向け標準の大半は未対応という判定です。
面白いのはコマース系の項目です。UCP(Universal Commerce Protocol)のチェックは合格でした。hydrogen.shop は /.well-known/ucp にプロトコル対応を宣言するファイルを実際に置いていて、チェッカーはそれを正しく検出しています。
並べると、何を測っているかの違いが見える
| 問い | 静的チェックの答え | 実歩行の答え |
|---|---|---|
| エージェント向けの宣言ファイルはあるか | UCP profileあり(合格) | 見ていない |
| robots.txt・サイトマップは整っているか | 合格 | 見ていない |
| 会員登録フォームは通れるか | 見ていない | CAPTCHAで停止 |
| カートに入れて決済直前まで行けるか | 見ていない | 未到達(手前で停止) |
静的チェックが見ているのは「ファイルや設定が置いてあるか」。実歩行が見ているのは「導線を実際に通行できるか」。UCP対応を宣言しているまさにその店で、エージェントは会員登録を通れませんでした。宣言と通行は別の事実で、片方からもう片方は導けません。
これは今回のデモストアに限った偶然でもなさそうです。UCP Checkerの2026年7月の集計では、UCP検証済みストアが11,414店ある一方、決済までの実装が確認されたストアはゼロでした(出典: State of Agentic Commerce July 2026)。「対応の宣言」と「実際に買える」の間の溝は、業界規模で観測されています。
だから静的チェックが無意味、ではない
誤解してほしくないのですが、静的チェックはやるべきです。llms.txtや構造化データの整備は、エージェントに発見され、正しく理解されるための土台で、これが無いと歩行以前の問題になります。無料で1分で終わるものを飛ばす理由はありません。
健康診断でいえば、静的チェックは問診と血液検査、実歩行は実際に歩いてもらう運動負荷試験です。順番としては安い方から。静的チェッカーで土台を整えて、そのうえで「では実際に通れるのか」を歩行で確かめる。私たちの整理では、静的チェックが見るのはRead(読める)とProtocol(宣言)の層、歩行が見るのはWalk(歩ける)とPolicy(ボット対策でどう扱われるか)の層で、両方そろって初めて「買える」に近づきます。
自社サイトで確かめたい場合
Shopifyストアなら、歩行で止まりやすい行と、店の管理画面では直せない基盤残差をShopifyのプレイブックに分けて並べてあります。静的チェッカーは上に挙げたツールを直接どうぞ。実歩行の側は、私たちが店舗オーナー本人の同意があるストアだけを対象に、AIエージェントを実走させて停止箇所をスコアと理由つきで返す公募調査をやっています。レポート生成は現在無料で、CAPTCHAの突破も購入の確定もしません。申し込みは日本のECサイト エージェント到達性調査から。静的チェックの結果を持ったうえで歩行の結果を見ると、自社サイトのどの層に課題があるかがはっきり分かれます。
よくある質問
静的チェックで高評価なら、実歩行も通りやすいのでは
相関はあるかもしれませんが、保証はありません。今回の例が示すとおり、プロトコル対応を宣言している店でも会員登録のCAPTCHAで止まります。逆に、宣言ファイルが何も無い店の導線がすんなり通ることもあり得ます。層が違うので、片方で片方を代用できません。
他の店の実歩行結果と比べられますか
私たちは同意のないストアを歩かせないため、比較材料は公開デモと、公募で同意をいただいたストアの集計に限られます。この方針は変えません。他店との比較より、自社サイトの停止箇所と修復可能性を知る方が、実務にはよほど効きます。
静的チェッカーの結果が悪くて落ち込んでいます
Shopify公式のデモストアですらLevel 1でした。いま静的チェックで並ぶ項目の多くは規格が出たばかりで、未対応が普通の状態です。順位を気にするより、robots.txtと構造化データのような基本を先に押さえて、導線が通るかを実測で確認する。その順番で十分だと思います。
自分のサイトでも試す
同意をいただいたサイトに限り、無料で1本診断します。勝手なスキャンはしません。購入確定は押さず、CAPTCHAも突破しません。